「地域から考えるサステイナブルな未来づくりワークショップ」第2回中間発表報告(後半)です。
サステイナビリティ学が専門の工藤尚悟先生から、ご自身が拠点とする「秋田県五城目町のサステイナビリテリィ」について、お話をうかがいました。

工藤尚悟博士(サステイナビリティ学)
秋田県能代市出身
国際教養大学グローバル・スタディズ領域准教授
研究内容は、縮小社会における持続可能な地域づくりなど
秋田県南秋田郡五城目町は、秋田県の中心から少し北側にある人口8,600人の小さな町。人口減少と高齢化に直面する農村地域の小規模自治体です。
「自然の奥に人の暮らしが見えるような里山。こんな風土をどう次世代につないでいくことができるのか?を考えています」と工藤先生。

「現状維持」だけじゃない、農村地域を豊かにする視点とは?
地方・農村地域の課題は、さまざまあります。
空家の増加、遊休化
休耕・耕作放棄地の拡大
学校の統廃合
民俗芸能の継承問題
農業、林業の担い手不足
単身高齢者世帯の健康管理
このような地域では、
「地域に残って暮らす上で必要な最低限のインフラ、買い物施設、仕事をどう維持するか。」
「縮小する経済の中、住民の健康で文化的な生活をどう守るのか。」
「無住化にどのように対応していくのか。?」
といった地域での生活を〈守り〉の部分のテーマについて、考えざるを得ません。
「でも、日々の生活を守る(維持する)だけではなかなか元気が出ません。どうやって生活を豊かにするのか?という〈攻め〉の部分を大切にしています」と工藤先生は言います。
地域で豊かに暮らすには「攻め」も大切に。
五城目町では、2015年から現在までに13個の企画が実現しています。
ババメベース(シェアオフィス)
シェアビレッジ町村(ゲストハウス)
ものがたり(アートスペース)
ハイブリッドスクーリング(教育)
んなのいえ(子育て中の親サポート)
ベリー農家(ジャム加工)
ポコポコキッチン(食堂&通貨)
いちカフェ(カフェ・レストラン
下夕町醸し室HiKOBE(カフェ)
ただの遊び場(子ども)
朝いちプラス(朝市イベント)
スクールトーク(小学校立替勉強会)
健康相談室(地域医療)
ババメベースは、工藤先生も拠点としている場所。

2013年3月に廃校となった旧馬場目小学校を利用し、同年10月に開館しました。
現在17企業が入居中(デザイン、ウェブ、教育、人材育成、ドローン操縦訓練、出張理髪店、大学研究室など)。
工藤先生は「デザイン・アート・アカデミアが共存する場所。地域で何かに取り組むことに興味がある人が多く訪ねてくる」と言います。
「まもり、つくり、つなげる」五城目町の、地域づくり4つのポイント。
工藤先生は2015年から五城目町で起きている様々なプロジェクトを見てきています。そんな先生が考える、「縮小高齢社会での地域づくり」で大事な4つの視点があります。
1)見方を変えてみる
人口が減ると社会制度を維持する負担が増えます。それは事実。
しかし「人口減少を悲観的に捉えるのではなく『何か良いこともあるんじゃない?』と逆に考えてみることが大切です」(工藤先生)。
たとえば五城目町の場合は、
「高齢者1人あたりに対する生産人口が少ない社会」をひっくり返して、
「子ども1人あたりに対する大人が多い社会」と言えるんです。

五城目町のキーワードは「世界一子どもが育つ町」。
大学教授と高校生の語り合いの場を作ったり、大雪が降った後にみんなで大きな雪山を作るイベントをしたりして、世代を超えた交流をしています。
工藤先生は「五城目町は、次世代を育成する機会に溢れたまち」と話します。
2)地域には、異質なものを流入させる仕組みも必要。
国内外問わず初めて町にくる人が「ちょっと立ち寄って地元の人と触れ合える場所をつくることが大事」(工藤先生)。
例えば、カフェやアートギャラリー、ゲストハウスなど。町のことを町だけにとどめず、新しいものが入ってくる仕組み(ゆらぎを起こすための装置)が必要だと言います。
そうすれば、住民が新しい視点や気づきを得る機会が担保されるからです。
3)無くなっていくものを見つめながら”豊かさ”を問い直す
将来、確実に人口は減っていく。
でもそれは、「私たちがどうしても無くしたくないものは何か?を考える機会になる」と工藤先生は言います。
例えば、伝統的な食文化や芸能、里山の管理方法など。

それをなぜ残したいのか、町にあることがなぜ大切なのか。
「無くなるものをみて、豊かさとは何かについて考えることができると思います。」(工藤先生)。
4)サステイナブルな地域は「自ら学ぶまち」。
工藤先生は「持続可能な地域の特徴は、次世代を自分たちで育てられること」だと説明します。

五城目町では、「やってみたい」もしくは「解決したい」ことがあれば、住民自ら学びながら話し合います。
例えば、少子化で児童数が少なくなったときの小学校の活用方法について。
他の地域の人に話を聞いたり、建築家を呼んで勉強会も開いているそうです。
このやり方を次世代に渡せると、
「刻々と変化する社会のなかで、自ら学び続け、対応のあり方を考えることができる地域は、。次世代を育成することについてもまた自ら考えられると思います」(工藤先生)。
まとめ
工藤尚悟先生の「秋田県五城目町のサステイナビリティ」講演会のレポートでした。
次回のワークショップは、2023年1月19日(木)。
ついに最終発表です!
報告を楽しみにしていてくださいね。
文:今泉 知穂
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